漫画と北国とわたし

ゴールデンカムイの考察だの感想だの聖地巡礼だのをつれづれと。本誌ネタバレ含みます。(他作品語るブログはじめました→ https://mochimochihq.hateblo.jp/ )

15巻感想(後編)【月島軍曹考察】

さて、149話150話は趣が異なりますね。月島軍曹の過去編です。
この二話は月島さん考察も兼ねるため真面目にやってみます。

以前筆者は月島さんのキャラ語りで、月島さんが絶望してて、ほかの道を選べず鶴見中尉の右腕になっているって書いたんですけど、
今回の149話、150話の加筆を受けてまた少し違った見方ができるかなと思ったので書いていきます。

前回の月島さん語りはこちら↓
mochikuchen.hatenablog.com


≪149話『いご草』≫
今巻で特筆すべきな月島さんの過去編スタート。
最初のページから加筆されています。
月島さんの台詞「死んだ気になってロシア語を勉強するんだな」。
これはかつて月島さんが鶴見中尉(当時は少尉)に言われた言葉ですね。
そして杉元に、「自分を制御できなければいつか取り返しのつかないことになる」

そこから月島さんの過去編に突入。
月島さんの悲しい過去と、鶴見中尉からの誘い。
この回は特に大きな加筆はなかったです。


≪150話『遺骨』≫
この話は重く、心に響く回だったなぁと思います。

まず、一番大きな加筆は最後の196ページから201ページですね。
月島さんがいご草の髪の毛を小樽の海に捨てにいき、兵舎に戻った後、鶴見中尉は琺瑯で作った額あてを付け、現在の鶴見中尉になる、という部分。

額あてのくだりは、本紙ではあおり文で「そして悪魔は仮面を被る」とあった部分を可視化したものなのかなと。
死神である鶴見中尉が出来上がった瞬間というか、そんな重要な場面だと思います。


そして最重要ポイントがいご草の髪の毛を捨てにいく軍曹。
これは色々は解釈が生まれると思います。
何もかもに絶望したとか、軍曹はいご草はもう死んでると思っているので海に還した、とか…
筆者はこの場面は、鶴見中尉の誓いを右腕として引き受けようとする軍曹の覚悟の表れだと思っています。
なぜその覚悟に至ったのかは以下の部分から考えました。

184ページ、いご草の台詞「だすけん基ちゃんはみんなに嫌われたっちゃね」
の流れでの185ページ鶴見中尉「満州が日本である限り~…お前たちの骨を守るために 我々は狂ったように走り続けるぞ」。
ここは月島さんが一度死んで、鶴見中尉の右腕になったという隠喩なのかなと思いました。
嫌われていた悪童が、必要とされる軍人になった。
いご草ちゃんの存在・言葉はある意味幸せな呪縛みたいなものでもあって、月島さんはいご草ちゃんだけが好きでいてくれたという意識の中で生きてきたわけですが、
鶴見中尉が何をおいても自分を必要としていると分かって、自分の生きる道が見つかったんじゃないかなと思うんです。

加えて、加筆部分、189ページの杉元と寅次が遠ざかっていくシーンと、
194ページの月島さんの台詞「そして死んでいった者たちのためにも~」。
これは185ページの鶴見中尉の「満州が日本である限り~…我々は狂ったように走り続けるぞ」という誓いを受けてだと思います。
月島さんにとって鶴見中尉の誓いは鶴見中尉のものだったのが、月島さんのものにもなった。
死んでいった者たち、戦争で死はたくさん見てきたと思うのですが、この寅次に譲られた橇によって自分が生きているという経験で
初めて自分のための死を目の当たりにしたのかなって思いました。
だから寅次と杉元との出会いは、軍曹が覚悟を持って鶴見中尉の右腕になるきっかけの一つでもあったと思うのです。


という点から月島さんはただの傀儡ではなく(鶴見中尉の右腕だから傀儡ではあるんだけど)、
スタートは選べなかったかもしれないけど、彼は覚悟を決めて自分で選んで、役目を果たそうと生きているんだと思いました。
野田先生も言ってましたが、月島さんは仕事人ですよね。
その仕事人が仕事人たる所以をここでみた気がします。


…ただ、これは鶴見さんからの見え方とは少し違うかもしれません。
ので、鶴見さんについては、今時点で思っていることを書けたらいいなぁと思っています(ずっと言ってる)。


というわけで、今巻も読了感半端なかったですね!!

単行本感想終わります。
※今後加筆修正するかもしれません。