漫画と北国とわたし

ゴールデンカムイの考察だの感想だの聖地巡礼だのをつれづれと。本誌ネタバレ含みます。

【本誌ネタバレ含】純粋なる芸術家 江渡貝くぅん

キャラ語りシリーズ、今回は夕張の服飾怪物(ファッションモンスター)江渡貝くぅんを。まずは毎回おなじみの筆者による偏ったキャラ紹介。


☆江渡貝くんてこんな人☆
表の顔は夕張の天才剥製職人、裏の顔は人間の皮を使って個性的なレザージャケットやフェ○スブックを作ったり果ては母親たちの剥製を相手にお話しする生活を送っていた見た目好青年のやばい奴。
死神こと鶴見中尉にたらされた後は一皮剥け本来の江渡貝くんとなり、月島前山に八つ当たりしながら偽刺青人皮作製に精をだす。
ついに出来上がった偽人皮を追っ手(尾形杉元白石)から守り抜くために月島さんとトロッコ旅行into立坑。立坑内爆発で足を潰され、もうだめだと悟り月島さんに偽人皮を託し月島さんを逃がし、自分はそのまま亡くなる。
月島さんに託された偽人皮はその後、鶴見中尉が刺青人皮を集める際に大いに役立つことになる。
ありがとう江渡貝くん、さようなら江渡貝くん。(号泣)


そんな江渡貝くん、モデルはエド・ゲインです。
るろ剣の外印のモデルでもある連続殺人犯(といっても殺したのは二人)であり、死体掘り起こしては皮からランプシェードとか太鼓とか作っていた人です。
江渡貝くんは生い立ちもゲインになぞらえていて、母親が抑圧的だったのも去勢されているのもそのためなのかなと。
ゲインの母親は敬虔なキリスト教徒で、それがいきすぎていたため男性器を汚らわしいものとして教育していたらしいので。ゲインはそんな母親を素晴らしい人物として尊敬し敬愛していたんだとか。(この辺はググったり映画を見てもらえるといいと思います(二階堂が叩いていた人間太鼓も映画の一コマです))
夕張編は所々にキリスト教の要素が散りばめられていましたね。(最後の晩餐パロディも夕張でですしね)
夕張編は非常に重要なターニングポイントだと筆者は思っています。下で解説しますが、ここで初めて第七師団と鶴見中尉の本領が発揮されてるというのもあります。

さてさて江渡貝くん。作中における江渡貝くんの功績について。
筆者は大きく分けて三つあると思いました。

・偽物の刺青人皮を完成させ、刺青争奪戦に風穴を開けた
・鶴見中尉の真骨頂、鶴見劇場を読者に知らしめた
・月島軍曹の人間性を明らかにした


一つずつ見ていきます。
・偽物の刺青人皮を完成させ、刺青争奪戦に旋風を巻き起こした
これは言わずもがななのですが、一応。
「これでは鶴見中尉に有利すぎる」と尾形も言ってましたが、刺青人皮には刺青人皮が集まるので、要はばらまけばそこに囚人が来るから待ち伏せてしまえばゲットできるよねということですね。
稲妻強盗もその手でゲットしました。
あれ以来一枚しか登場してませんが、きっとこれからも出てくることと思います。現在鶴見中尉の下にあるのは四枚ですかね?(一枚は夏太郎が持っていったし)
北海道で刺青人皮探してる土方さんと鶴見中尉の接触がまたあるのでしょうか。
それとも樺太組が北海道戻ってきてひと悶着ですかね。
偽人皮は江渡貝くんが命がけで守ったものなので、ぜひ活躍してほしいものですね。


・鶴見中尉の真骨頂、鶴見劇場を読者に知らしめた
鶴見中尉はすごいやつだとそれまで色々言われていましたが、中尉のたらしこみ術を一から十まで見せつけたのはこれが初めてだったと思います。(少し後の谷垣の過去語りの際にもちょっと発揮されてますが)
鶴見中尉に江渡貝くんも読者もたらされましたよね~。

手法としては、
相手を見て、江渡貝くんが自分の芸術のためなら手段も選ばず苦労も厭わない人だと瞬時に理解する。

まずはその追い求める芸術性への「理解」と「称賛」を示す。(手袋素晴らしいの下り )

しかし江渡貝くんは一筋縄ではいかない相手で(豚皮ですよとかいって)、しかも抑圧的な親からの巣立ちができていない子どもだと解ると、「共感」による仲間意識を芽生えさせる。(「江渡貝くぅん!」&刺青人皮レザージャケット自分で作ったんだよのところ)

最後は親の支配から巣立ちさせることにより江渡貝くんの新たな「支配」者になるという…

こっわ。
状況と相手によって手法を変えてたらしこむ、正にたらしの天才ですね。
そんな鶴見劇場を知らしめてくれた江渡貝くんは、その後命を掛けるまでに鶴見中尉に心酔するわけですね。


・月島軍曹の人間性を明らかにした
それまで一モブ(失礼)だった月島軍曹はここへきて本領を発揮しましたね。
江渡貝くんに何を言われても流して「集中集中!」って。
我が儘芸術家江渡貝くんと、屈強な仕事人月島軍曹のコントラストが面白みを作っていますよね。
そして後半のトロッコ旅以降は、芯の通った芸術家と屈強だけど冷酷になりきれない兵士、と二人の見え方が変わっています。
江渡貝くんのトリッキーな性格と芸術家としての本懐と冷酷なまでの覚悟は、逆に冷酷にはなりきれないもろい部分がある月島軍曹の魅力を引き出していると思うのです。


ということで、二つ目と三つ目からは江渡貝くんは鶴見中尉と月島軍曹(と前山さん)の本質を真にあぶり出した最初の人だと言えるかなと。(ちなみに2番目の人は鯉登少尉だと思っています)
それは江渡貝くんが人間として純粋だからだなぁと思っています。
人間としての純粋性は江渡貝くんの魅力の一つですね。


そして江渡貝くんは絶対的な教え(=母親)に支配されていたのが、尾形の言う死神(=鶴見中尉)に魅入られて結果命を落とすことになっているんですね。
ここで江渡貝くんが救われているのは死神によってなのが非常に興味深いところというかゴールデンカムイだなぁと思うところ。人によっては死神が神になり得る二面性とか危うさが描かれている。世の中勧善懲悪なだけじゃないというか。

江渡貝くんて、ぎりぎりの危うさの上に成り立ってる人ですよね。そこをたらしこまれたわけですが。
ヴァイオリニストのパガニーニは悪魔と契約して超絶技巧を手に入れたなんて言われていたわけですが、芸術家と悪魔ってキリスト教圏では結びつきが強いですよね。作品のためには悪魔に魂を売るというのが芸術家の性だと思われることもしばしば。
江渡貝くんも芸術家ですからね。
ただ、母親の歪んだ教えによってではなく、悪魔(というか死神)によって江渡貝くんは幸福な死を迎えるわけです。

月島軍曹の記事でも書きましたが、人間としての生より芸術家としての生を取ることにためらいがないのは、やはり純粋な芸術家だからなんですね。
鶴見中尉から全身全霊をかけることができる役目をもらい、全うできた時点で、彼の役目はもう終えているわけです。
芸術がこの世に残る限り自分も遺るからそれでいいと。
この芸術家としての純粋性は江渡貝くんの最大の魅力だと筆者は思うのです。


更にもう一つ言いたいのが、鶴見中尉は江渡貝くんの本当の理解者だったと思うのです。
鶴見中尉はたらしこむ手段としてだけの「理解」ではなく、芸術家の江渡貝くんとその芸術性を真に理解していたんだと思います。
作品(偽人皮)を、鶴見中尉は決して無駄にはしないって言って大切にしているわけですものね。
(鶴見中尉の、モノローグやふとした時に見せる「人を大切にしている感」がわたしは大好きです。(軍曹ほんと…誤解しないでと言いたい。))


そんなわけで、人間としても、芸術家としても純粋だった江渡貝くん。
天国でも剥製作ってるんだろうか…。
などと思いを馳せて今回は終わります




…ちなみにすっごくどうでもいい話なんですが、江渡貝くんの鶴見さんへの思いと鯉登少尉の鶴見中尉への思いって対照的ですよね、という話をしますね。

例えばキャラが誰か一人増えて囲まれるとしたら誰がいいかって質問に対して(唐突)、
江渡貝くんは間違いなく鶴見さんに囲まれたいって言うと思うんです。
自分で鶴見さんの分身を作ってるし、会う方法が「鶴見さんを連れてきて」でしたし、望みが鶴見さんによしよしぺろぺろして「もらう」でしたし。
鶴見さんに何かしてほしい、っていう受動の考え方。

対して鯉登少尉は自分が増えて鶴見中尉を囲みたい、なんじゃないかってちょっと思ったんです。
コラ写真もそうだけど、自分がもっとこうしていればっていう台詞が多いですし。
鶴見中尉に何かしたい(役に立ちたい)っていう能動の考え方。

これは芸術家と軍人の違いでもあるんですが、恐らく生きてきた環境の違いでもあるかなと思います。
ゆがんだ巣の中にいつまでも閉じこもっていた江渡貝くんと、小さいころから幼年学校等で親元から離れて暮らしていた(多分)鯉登少尉という対照的な二人。
どちらも歳も近くて、とんでもなく才能を発揮して鶴見さんに見いだされて鶴見信者になったわけだけど、それぞれ鶴見さんへの思いの持ち方でも二人の個性が分かるよな~という話でした。

ほんとにどうでもいい。(笑)


おわりもす。