漫画と北国とわたし

ゴールデンカムイの考察だの感想だの聖地巡礼だのをつれづれと。本誌ネタバレ含みます。

【本誌ネタバレ】169話感想

本誌感想です。



また話が動きましたね~。
尾形=山猫の理由…誰も山猫って呼んでないよな~なんて思ってたら呼ばれてましたね、中々にひどい理由で…。
なんか話が進めば進むほど尾形への同情がすごい…。
尾形が抱える虚無感と淋しさは周りの人たち(読者も)の心をえぐりますね。
本人はなんとも思ってないわけだけども…。
そして今回はそれぞれのキャラクターの個性が色濃く表れている回だったなぁと。



最初から見て行きます。
今回はある程度あらすじ→感想って感じで書きますね。


樺太アイヌの村に滞在している先遣隊。
杉元はアシリパさんと灯台守の娘さん・スヴェトラーナさんを探しています。
ここでは成果がないようで、家の中で全員座って話しています。
そこへエノノカちゃんがチカパシに「メコオヤシ出たって」。メコオヤシとは樺太アイヌの昔話にでてくる化け物とのこと。
月島軍曹は「オオヤマネコだな」と言い、鯉登少尉は「尾形百之助じゃないのか?いよいよ奴らに近づいたか」と。
谷垣と月島さんはこの言葉の意味を察して複雑な顔。
杉元が言葉の意味を聞くと「山猫の子供は山猫」と少尉。続いて軍曹が、山猫は芸者の隠語で、第七師団の一部の連中が言っていたくだらない軽口だ、と説明。
杉元は「本当にくだらねぇな…」と呆れますが、
鯉登少尉は「あの性格だ、嫌ってる人間も少なくない 私も大嫌いだ」「それに「山猫」にはいんちきとか人を化かす意味の隠語もあるのだろう?」「くだらん軽口だがしかし案の定…ではないか」「違うか?杉元」。

メコオヤシがどうなったか、エノノカとチカパシが話します。(ここすごいかわいい)
少尉は「その変な話に教訓があるとすれば……「泥棒猫は撃ち殺せ」だ」と。

とりあえず、ここまでの感想を…


ここまで、先遣隊のキャラクターが色濃くでててもう最高ですね!!
「生まれ」という自分ではどうしようもないことで陰口を言われる尾形に対する感情の違いがでているというか…一人一人見て行きますねもう!!

まず杉元ですが、まず前提として筆者が考える彼の魅力の一つって、「迷い」だと思うんです。
杉元は優しい人だから、こうと決めてもやっぱり迷って方向転換もして、さらに迷って…というすごく人間らしい主人公です。
家族を不幸に失って、村の人からは村八分にされ、戦争に行って親友を失い…見つけた光であるアシリパさんは、今ここで言う「泥棒猫」にさらわれているわけですが…
でも、杉元も自分ではどうしようもないことで差別される経験を持っているから、その泥棒猫に対してもある種の同情心とか相通ずるものを感じている。
もっと言えば頭を撃たれた時に尾形を感じている時点で、杉元ってやっぱり尾形と通じるものがあったんだろうな…という感じがしていますね。
網走では尾形をぶっ殺してやるって言ってましたが、やっぱりここでまだ迷いが生まれている。
というか元々多分ずっと迷っているのが明るみに出たのかなあという気がします。
だから鯉登少尉に「違うか?杉元」と言われて肯定も否定もしなかった。

次に軍曹。
軍曹も生まれが不幸だから、やっぱり尾形には少し同情する部分もあるのだろうなという表情。
でもその感情って任務遂行には邪魔なものだから、この表情をしているのではなかろうかと。
8巻で尾形は軍曹を「屈強な兵士」だと評価していましたし、軍曹も尾形の実力を純粋に評価していました。
恐らく軍曹は尾形の生まれや性格どうこうを排除して、ただ純粋に尾形の実力を見ていると思います。
というか軍曹って、人の能力を見据える目がスバ抜けてますよね。
感情を殺している故か、自分の感情や周りの評価なんか一切排除して人を見ることができる人。
人を見る目が卓越してるのは鶴見中尉もですが、中尉の場合は自分にとって使えるか否かっていう物差しがあります。
軍曹の場合はそれがなく、一対一で物事を考えられる人だなぁと。
生まれでどうのこうの言う連中のことを下らないと一蹴する程には廉潔で、上官に忠実で、純粋に人を見る目がある有能な軍人…これは鶴見中尉に見いだされた理由がわかります。
ただ…尾形を「本部の飼い猫」と罵倒していたなと思い返すと、軍曹もやはり尾形が造反したことに対して失望と怒りを感じていたと思います。
この辺は芯まで組織に属する軍人だな軍曹。
てかこれは完全に憶測ですが、前山さんを殺されたのも大きいのかもとか思ったり思わなかったり…。
軍曹と前山さんて103話の勇作さん回想でも一緒にいるから付き合い長いんだろうし。
戦友を殺されたのは軍曹にとっては怒りの理由として一番大きいのかも。

さて次は谷垣です。
彼は生まれは不幸ではないですし、尾形のことも好きではないでしょうが、杉元とは別のベクトルで優しい人だから、山猫の話が出たとき困ってましたね。
谷垣は根が純粋だから、人を蔑むことはよしとしない。
そして谷垣は師団時代も尾形への軽口には参加してなかっただろうと確信できる理由のもう一つが尾形への評価の高さにあって、その評価の高さは谷垣のマタギという性質からくるものなのかなと思っています。
スナイパーって当時の軍では卑怯者として嫌われていたんですね。正々堂々勇作さんみたいに前線で突っ込んでいくのが勇敢だと思われていた。
でも谷垣はマタギだから、尾形のスナイパーとしての実力が一流だと分かっていて、そして尾形を(軍曹とはまた別のベクトルの)尊敬や憧れという感情でもって評価しているんじゃなかろうかと思うのです。
尾形って軍では谷垣のこと可愛がってただろうなと思うんですが(谷垣にとっては嫌な可愛がられ方ですが)、背景は谷垣の純粋さと人を悪く言わない優しさがあると思いました。
てかおそらく谷垣はどんな人からも好かれていただろうなって気がしますね。

さてさて、この話を始めた鯉登音之進。
彼が他の三人と違って尾形への同情心が微塵もないのは、生粋の軍人であり経験不足の若い将校だからということに尽きると思うのです。
まず、少尉は尾形の生まれについては特になんとも思っていないと思います。
というか、それがどんなことなのか想像もできないだろうなと思います。なにせ愛されて育った坊ちゃんだから。(だから感情のままに尾形本人いないとこで何も知らない杉元の前で山猫の話しちゃう。)
加えて、生まれを蔑む軽口も下らないと思っていると思います。
生まれに同情もしないけど、軽口に賛同もしない。
むしろ鯉登少尉が問題にしているのは、尾形の性格ですね。「私も大嫌いだ」言ってますものね。

少尉は自分ではどうしようもできないことで蔑まれたり差別されることに関して、想像できないからこそ、言われる側はその性格を改めろとすら思っているのではないでしょうか。
屈強で清廉潔白の兵士であれば、生まれの良し悪しで蔑む者もいなくなる。むしろ軽口言われるのは尾形の性格に問題があるからだ、くらいに思ってる感じがしますね…。
尾形は所謂「いやな奴」だと思います。「なりモスから」とか元上官に対して言っちゃうところを見ると、おそらく軍にいたころからその無礼さと人を馬鹿にした態度は、透けて見えていたんじゃないだろうかと。
それは軍人として礼儀礼節を知らない奴だと、少尉には見えたでしょう。
そして尾形は鶴見中尉に見いだされたにも拘らず簡単に裏切り、あっちこっちふらふらしているようにも見えるのでしょう。
少尉にはそれが気に食わない。なぜなら鯉登少尉は将校であり、生粋の軍人だから。
組織や上官に対する尊敬の心を持たず、ましてや上官を裏切るなんて許せない。
(飛行船の上で「尾形百之助貴様…」のあと「鶴見中尉殿~」言ってますしね。その先は読めませんが恐らく裏切る云々じゃないかと。ここはアニメ待ちですね。)
それだけならまだしも共に行動していた杉元たちをも裏切ったことから、案の定人を化かす山猫=色事で簡単に転ぶ芸者のようだ、と皮肉たっぷりに言ってるのですね。(少尉結構性格悪くてすごい口悪いからね)

だから少尉に尾形への同情心はかけらもなくむしろ敵対心しかないのは、少尉は真っ直ぐで、想像力も欠けてて、感情で動く若者だからでしょう。(先々週も感情で杉元たちを心配してましたし。)
何の疑いもなく泥棒猫は撃ち殺せと言えるのは、少尉が純粋で単純明快な経験の浅い青年将校だからだと筆者は思います。


さて、急に話は変わりますが、尾形のような者への同情心は果たして将校として必要な能力なんでしょうか。
鯉登パパが樺太へ音之進を送り出したのは、指揮官として成長してほしいからなわけですが、パパは他者への同情心を身に着けてほしいと思っているのでしょうか。
おそらく答えはYESに近いNOじゃないかと思います。
任務の遂行に人間の感情はいらないっていうのは月島軍曹を見ていてわかることなんですが、指揮官はある程度部下への思いやりを持つ必要がある。
生まれや血で蔑まれるという本人にはどうしようもできないことへの理解はある程度必要だと思うのです。
だから、音之進は軍人としては間違ってないし真っ直ぐそのままでいいんだけど、もう少し想像力を鍛えてほしいな。とパパが思っていたら最高ですね。
戦争行きたかったとか平気で言っちゃう考えなしのままではいかんですし。
勇作さんもそうでしたが、やっぱ仕官学校出の温室育ちは想像力が欠けちゃうんですかね。
きっとパパはそこを危惧して樺太へ送り出したんだろな。
広い世界を見るというのは想像力を鍛えることでもありますし。

鯉登パパは鶴見中尉ですら音之進の成長の糧としてると思いますが、ほんとに音之進への期待が大きいですね。
キロランケが、この樺太の旅がアシリパを成長させるとか言ってましたが、鯉登パパも、この樺太の旅が音之進を成長させると思っていますよね。
だから、尾形に対する音之進の考え方や感情が、この樺太旅で変化するのかしないのか、するならどう変化するのかも今後の見どころの一つになるんじゃないでしょうか。
それこそ音之進の成長が可視化される瞬間ですね。描かれるかはわかりませんが、楽しみにしております。

しつこいくらいに言ってますが、やっぱり音之進はこれからの人。
アシリパさんと対になる存在で、光になる存在なのですね。
日露戦争に行ってない、新しい世代だからね


…長くなりました。さて続きを。


キロチームに場面が移行します。
アシリパさんメエコッ(猫)に似ている足跡を見つける。この足跡がメコオヤシかと驚くアシリパさん。
アチャに昔話として語られたんですね。(チカパシもアシリパさんもメコオヤシがタバコ入れを食べたかどうかすごく気にするのはなぜなのでしょう。タバコは食べないってのは暗喩?)
また初めて聞くアチャの話にアシリパさんは嬉しそう。
そんなアシリパさんにキロちゃんは、亜港監獄にウイルクをもっと知っている人がいると紹介。
証拠がないため処刑されずに幽閉されている。皇帝暗殺の首謀者、ソフィア・ゴールデンハンド。
で、亜港監獄へいくことになった一行。

そんな話をする一行と少し離れて尾形。
メコオヤシこと山猫を見つけます。
撃とうとしたのか銃をおろしますが、アシリパさんに話しかけられた次の瞬間にはもう山猫はいなくなっていました。
尾形は無言で、山猫とは違う方向へ、ほかの三人のいる方向へ歩みを進めます。
アオリは「我が山道を往け。堂々と。」
今週はここでおわり。


皇帝暗殺の首謀者ビッグ・マム(ソフィアさん)も登場し、いよいよ目的地である亜港監獄へいくことになりましたね。
山田団長の読み通り。さすが情報将校である。
そしてさすがといえばキロちゃん、さすがの話術で巧みに監獄へ先導しました。すばらしい。


尾形に関してはラストシーンにすべて持っていかれましたね。
山猫と別の道を行く。
これは人を化かす山猫(=かつての自分)との別離を意味しているのでしょうか。
ということは、尾形がこのチームで行動しているのは、自分の役目を見つけたからなのでしょうか。

尾形、今回はずっと無言なのが孤高のスナイパー感があるというか尾形らしいなというか。
我が山道…そうですよね。彼はずっと山道を歩いてきたわ。

尾形が軍で嫌われていたのは性格も大きいけれど、スナイパーとしての能力がズバ抜けていたこと、おそらくその能力でもって若くして上等兵になったであろうこと、師団長の隠し子であり妾の子であるということも大きいのではないかと筆者は思っています。性格だけでなく妬み嫉みも多少なりあったと思うんです。(上官であり能力もずば抜けてる鯉登少尉は妬む必要ないから単純に性格が嫌いなんだろうけど。)
そんなの、尾形にとって軍はさぞかし息苦しかっただろうなと思います。
「山猫」も「スナイパー」も悪口とも取れるわけですからね。
軍において尾形が人間として認められていたことはあったのだろうか。なかっただろうな…。それでは軍になんの未練もないですよね。脱走した時の解放感たるや…!ですよね。


杉元たちとの旅、あれが尾形の素だったらいいな…。
とりあえず尾形のこと考えると、泣ける。



今週はちょっと真面目な感想だったので最後に感情のまま頭悪い一言感想を。


「大嫌いだ」って言ってる鯉登少尉の口、かわいい。かわいすぎて五度見した。なんなんだお前。そしてスチェンカ編で見られた口悪い単純少尉が見れてちょっと嬉しい。
タバコ入れ食べる食べないのはなししてるエノノカチカパシ、すげーかわいい。こわい…←かわいい。かわいい!!!
げんじろちゃんはほんとうにいいこ。
ヘンケって鯉登パパに似てる(笑)
てか月島さんそろそろ鯉登少尉に辟易してない?大丈夫か軍曹、目が死んでる。

尾形は我が道を行け。応援しとるぞ。



おわります。